黙秘権は,言いたくないことは何も言う必要がない権利です。
ずっと黙っていることもできますし,言いたいことだけを言い,言いたくないことだけを黙ることもできます。
いつ黙っても,いつ話しても,再びいつ黙りはじめても,まったく自由です。
黙秘権を行使したことで不利益を受けることはありません。
警察官や検察官は,被疑者を自白させるために,よく
「黙秘していると,反省していないと思われて不利になるぞ」
と脅してきます。
これは,違う場面の出来事を意図的にごちゃ混ぜにした,明らかな嘘です。
正確には,
「刑事裁判では,自白していることで裁判官に反省の態度を示すことができる場合があり,反省していることを理由に刑が軽くなることもある。」
しかし,
「自白していない(黙秘しているか,やっていないと言い続けている)場合には,少なくとも反省していることにはならないので,反省しているという理由で刑が軽くなることはない。」
というだけのことです。
黙秘しているから不利になっているのではありません。自白すれば罪が軽くなるのでもありません。罪を認めている人の中で,真摯な反省を認められた人については,普通よりも軽くなる場合がある,というだけです。
そもそも,自白していれば当然に有罪で,すでに罪をかぶっているのですから,黙秘した場合よりも自白した場合が有利であるなどという言い方は,はじめから嘘なのです。
実務上,黙秘権との関係で重要なのは,実は「黙秘すること」ではありません。
黙秘しようがしまいが,取調べが可視化されてビデオ録画されているのでない限り,ほとんど関係ありません。
大事なのは,「間違った供述調書を作成させないこと」です。
取調べの結果,話した内容を書かれた書面が供述調書(供述録取書)として作成されます。
供述調書には,当然のように署名や指印を求められます。
供述調書に署名し,指印を押すと,そこに書かれた内容をすべて認めたことになります。
しかし,黙秘権がある以上,供述調書を作成するかどうかは,もともと被疑者の自由です。供述調書を作る義務などありません。
作られた供述調書に訂正を求める権利もあります。
仮に供述調書をいったん作ったとしても(訂正した後でも),署名や指印をするかどうかは,やっぱり被疑者の自由です。
このような供述調書の作成方法について細かく指導できる弁護人こそ,本当に優秀な刑事弁護人なのです。