妖しい法律(その4)~18歳は大人でしょ?~

大人って,何歳のことですか?

 

法律的には,一応,20歳からと考えるのが標準的です。これは,民法が『年齢二十歳をもって,成年とする。』と定めているからです(第4条)。

 

20歳になると,選挙権が与えられます(公職選挙法第9条)。

お酒を飲んでも,煙草を吸ってもよくなります(未成年者飲酒禁止法第1条,未成年者喫煙禁止法第1条)。

有効な契約を結んだり,馬券を買ったりもできますね。

逆に,成年に達するまでは,法律上未成熟であるとみなされて,子どもとして親の親権に服さなければなりません(民法第818条1項)。

 

しかし,現実には,18歳の大学生がコンパでお酒を飲んでいても,誰も注意しないでしょう。法律上はともかく,肉体的にも社会生活のうえでも,もう十分に大人と評価できるはずです。

民法の制定過程をみても,成年を20歳とした具体的根拠はよくわかりません。実のところ「何となく」そう決まったようです。

 

そもそも,昔は数え年12歳とかでも元服しましたし,今でも野郎どもにとっては童貞を捨てれば「大人」でしょうし,女の子が子どもを産める体になると赤飯を炊いて「大人」になったお祝いをするとかしないとか……。

 

法律の話に戻ってみても,バイクは16歳から,自動車でも18歳から免許を取れますね。

18歳未満とHすると処罰されることがありますが(各地の青少年保護育成条例等),逆に言えば,18歳を過ぎていれば相手が未成年者であっても,肉体関係を含めて自由に男女交際できてしまうわけです。

それどころか,親権者が許可する限り,18歳の未成年者が性風俗店で働こうがAVに出演しようが何の罰則もありません。

そもそも,男は18歳,女は16歳を過ぎれば,父母の同意を得て結婚することだってできるのです(民法731条)。

で,結婚した場合は,20歳未満でも成人とみなされます(民法753条)。離婚しても未成年者には戻りません。

結婚して直ちに離婚しても成人のままですから,「16歳で独身の成人女性」も存在します。既に成人ですから,再婚するのも自由。もはや父母の同意すら不要です。

 

ずらずらと書いていくとキリがありませんが,要するにもう「18歳で成人」ということにしたらいいんじゃないでしょうか。そしたら,大体の法律関係と社会的評価が一致して,世の中がかなりスッキリするでしょう。

ちなみに,天皇や皇太子とかは,18歳で成年です(皇室典範22条)。

 

もっとも,20歳以下の18歳とか19歳とかで高額の買い物をできることになってしまうと,近年の消費者保護の流れに逆行するという消極意見もあります。

それはそれで理解もできるのですが,その「保護」って,すごく中途半端じゃないでしょうか。そこだけ言うの?って感じで。

 

年齢に関する法律は,大抵どこかしら妖しいところがあります。

中でも,20歳を成人とする超有名な規定こそ,実は非常に妖しい法律のひとつなのです。