不当逮捕されないためには,どうするか?(2)-通常逮捕の場合

手続要件の違反を見つける

警察官が有効な逮捕状もないのに通常逮捕しようとすれば,違法です。

 

もちろん,警察が逮捕状を忘れるなんてことは,まずあり得ないでしょう。

ところが,実は逮捕状には,しっかりと有効期限が書いてあります。

間違って期限切れの逮捕状を使ってしまう違法逮捕のケースは,あり得ます。

 

警察官が,所持している逮捕状を被疑者に見せないで通常逮捕しようとするケースは,ときどきあります。

逮捕の際には,逮捕状を呈示することが必要です。

したがって,逮捕状を呈示しないでする通常逮捕は,違法です。

逮捕の理由がないことを示す

次に,「逮捕の理由」がない逮捕は,違法です。

 

疑われている理由がわかっている場合,それが誤解であることをその場で直ちにはっきりさせることができれば,逮捕はできなくなります。

 

たとえば,他人の自転車に乗っているときに職務質問をされ,自転車を盗んだ疑いをかけられて逮捕されそうなとき,友人から借りた自転車であることを,その場で友人に電話するなどして証明してしまえば,逮捕されることはありません。

こんな場面でいきなり黙秘権行使などしてしまうと,逆に逮捕されてしまいますから,注意してください。

逮捕の必要性がない状況を作り出す

不当逮捕を免れるために一番効果的な争い方は,「逮捕の必要性」がないことをはっきりさせることです。

 

逮捕の必要性とは,その人が逃げたり,証拠を隠したり壊したりする危険があるということでした。
ですから,自分が逃げるはずがない,証拠を隠したり壊したりする危険がないということをはっきりさせればいいのです。

 

そのためには,まず,身分証を示してメモを取ってもらうなどして,自分の住所・氏名,さらには連絡先の電話番号などを明らかにしてしまうことです。

家族と一緒に住んでいるとか,きちんとした仕事があるとかいった事情があれば,そのこともはっきり告げましょう。

そうすると,「この人が今の生活をすべて捨ててホームレスになる覚悟でどこかに逃げ出すはずがない」と,はっきりします。

 

証拠隠滅については,多くの場合に問題となるのが,実は証拠物(物)ではなくて証人(人間)です。

なかでも重視されるのは,被害者や目撃者を脅したり説得したりして,事件を無かったことにしようと工作するのではないかという危険です。
これに対する反論は,被害者や目撃者が見ず知らずの第三者であるとか,自分とは名前も連絡先も知らない関係だということをはっきりさせるのが,一番です。

そうすれば,工作のしようがないと客観的にわかります。

 

このようにして,逮捕の必要性がないことをはっきりさせれば,逮捕することはできなくなります。 

軽微犯の特別な逮捕要件を打ち消す

もう一つ,逮捕の要件を思い出してください。

「30万円以下の罰金,拘留または科料に当たる罪」については,住居不定か,警察の呼び出しを無視した場合でなければ,逮捕できません。

たとえば,過失傷害罪,侮辱罪,軽犯罪法違反の罪などがそうでしたね。

 

したがって,何の罪で逮捕されようとしているのかを逮捕状で確認したうえ,30万円以下の軽い罪であれば,自分の住所がはっきりしていることと,警察の呼出を無視していない(正当な理由があった)ことを示せば,逮捕できなくなります。 

逮捕に対して物理的抵抗をしてはダメ!

不当逮捕に対する抗議は,必ず,冷静に,できるだけ淡々と行ってください。

警察官とのやりとりを録音できれば,より望ましいでしょう。

 

警察官による逮捕に対して物理的な抵抗,つまり,力尽くでの抵抗をすると,その抵抗自体で公務執行妨害の現行犯人であることになってしまい,現行犯逮捕の要件を満たしてしまいます。
明らかに不当な暴力を受けて身を守る必要がある場合は別として,逮捕に対しては,決して物理的に抵抗してはいけません。

 

とにかく落ち着いて,逮捕の要件を満たさないことを示す努力をしましょう。