逮捕の際の警察官による暴力は,どこまで許されるのか?

逮捕では,実力行使も許される?

逮捕の際に、警察官が被疑者に暴力を振るうことは許されるのでしょうか。


逮捕は法律で許された強制的な処分です。

強制的な処分をすることを,逮捕状を出すことによって裁判官が許しています。

したがって,抵抗する被疑者に対しては,必要な実力行使,いわゆる力づくの逮捕も許されます。

これは,私人による現行犯逮捕の場合でも同じです。

逃げる人や暴れる人を無理に取り押さえちゃいけないなんて言ったら,逮捕なんてできなくなってしまうからです。

 

ただし,「その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され」るだけです(昭和50年4月3日の最高裁判例)。

決して,逮捕のためには何をしてもいいというわけではありません。

ここには十分な注意が必要です。

暴力による違法逮捕で無罪になることも

必要な限度を超えた暴力があれば,逮捕は違法です。

逮捕が違法なら,たとえ警察官が職務のつもりでやっていても,暴力を正当化できません。

私人が逮捕を正しいと信じてやった場合でも,同じです。

限度を超えた暴力による逮捕は,警察官であれ私人であれ,逮捕した側が罪に問われる可能性があります(刑法194条,220条,35条)。


刑事物のテレビドラマでやっているような,警官が被疑者を派手に殴りつけて大人しくさせてから逮捕するようなやり方は,ほぼ間違いなく,限度を超えた違法な逮捕になるでしょう。

 

逮捕時に暴力があって逮捕が違法とされた場合,その後の一連の手続や警察の集めた犯罪の証拠が,まとめて違法と判断されることもあります。
そうなると,たとえ実際に罪を犯していても,裁判で「犯人」が無罪になることもあるのです。