別件逮捕とは何か?

別件逮捕の違法性とは?

別件逮捕という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

 

別件逮捕(別件勾留)とは,本命の事件(本件)について逮捕の要件がないのに,とにかく本件の取調べをしたいがために,別の事件(別件)でとりあえず逮捕して本件の取調べをしてしまうことです。

 

たとえば,ある被疑者Xについて,警察は本音では殺人事件での取調べをしたいが,証拠が少なすぎて,さすがに裁判官の逮捕状がとれそうにない。

そこで,警察がXを付け回し,万引きだとかキセルだとかいった軽微な罪の疑いをかぶせて,とりあえずXを逮捕してしまうことがあります。

そうして,逮捕後すぐに殺人事件の取調べをはじめてしまうのです。

 

こうした汚いやり方が違法であることは,間違いありません。

別件逮捕を違法とする判例もあります。

別件逮捕として逮捕が違法となれば,その後の手続も違法になる可能性があります。

別件逮捕で違法だと争っても,勝てない?

しかし,警察も,いつまでもお馬鹿さんではありません。

すぐに裁判所で違法だと言われてしまうような分かりやすい別件逮捕は,今では非常に少なくなっています。

 

たとえば,先に逮捕された別件の万引き事件について,万引きしたことについては逮捕の要件が十分に備わっていて,逮捕後にはその万引き事件に関する取調べもきちんとしながら,殺人事件のことも少しずつ聞いていった場合,どうなるでしょうか。

たとえ殺人事件と比べれば軽微であるとしても,万引きは窃盗事件なのです。

万引きについて逮捕の要件が備わっている以上,窃盗事件で逮捕するのが違法だとは,裁判所としても言いにくいことになります。

したがって,警察の本音は誰が考えても別件逮捕だとしても,法律上,必ずしも違法ではないことになってしまいます。

 

このように,別件逮捕は今でも許されませんし,考え方としては重要なことなのですが,別件逮捕だからという理由で違法となるケースは,実務上,もはやほとんどなくなってきているのです。