当番弁護士とは?【刑事事件Q&A】

質問:当番弁護士って何ですか?

突然,知らない弁護士から電話がかかってきて,「お子さんが逮捕されました」と言われました。
当番弁護士だと言うのですが,信用してもいいのでしょうか?
電話してきた当番弁護士に,子どもの弁護を依頼してもいいのでしょうか?

回答:1回無料で接見するボランティアの弁護士です。

ご質問のケースへの回答

当番弁護士がご家族に突然電話をすることはあり得ます。本物かどうかは,落ち着いてよく話を聞いて確認してください。

面談の約束もせずに弁護士費用や示談金の振り込みだけを求めてくるなら,詐欺の可能性もあります。


本物の当番弁護士から電話があり,お子さんの逮捕が事実なら,一日も早く弁護人を選任するべきです。

勾留されれば20日間の身体拘束を覚悟しなければなりません。

弁護士への依頼を積極的に検討してください。


もっとも,その当番弁護士が刑事弁護に強い弁護士だとは限りません。

よく話を聞いて,信頼できる弁護士であることを確認してから依頼するか,あらためて刑事弁護の経験を積んだ弁護士を自分で探して依頼するとよいでしょう。

当番弁護士制度についての詳しいご説明

当番弁護士とは,その日に当番で待機している弁護士が,1回だけ無料で被疑者や被告人と面会して,逮捕された人の権利や刑事手続の流れなどを説明してくれる制度です。

警察に捕まった被疑者・被告人本人だけでなく,その家族や友人など,原則として誰でも当番弁護士の派遣を要請することができます。

 

当番弁護士の派遣要請は,各地の弁護士会(接見してほしい人が捕まっている警察署等の所在する地域の弁護士会)に,電話やFAXで申し込みをします。

弁護士会が派遣要請を受け付けると,その日に当番弁護士として待機している弁護士に出動依頼がなされます。

たいていの場合,依頼の当日中(24時間以内)に当番弁護士が被疑者・被告人と接見して,黙秘権の説明やその人に必要と思われる助言をします。

重大事件など一定の条件で,派遣要請を受けなくても,弁護士会が勝手に当番弁護士を派遣する場合もあります(「委員会派遣」と言います)。

なお,待機する当番弁護士は無作為の名簿順です。弁護士を選ぶことはできません。

 

当番弁護士派遣の費用は,すべて当該地域の弁護士会と日弁連(要するに全国の弁護士が納める会費)から支払われており,いわば弁護士によるボランティア活動として成立しています。そのため,当番弁護士の派遣費用は,日当や交通費のほか,外国人被疑者の通訳費用なども含めて一切無料です。

ただし,当番弁護士制度によって接見が無料になるのは,原則として被疑者・被告人一人のひとつの事件に対して,最初の1回分の接見に限ります。

同じ事件で2回目以降の接見を頼みたい時や,継続して弁護活動を依頼したい時は,その弁護士を正式な弁護人に選任する必要があり,原則として弁護士費用がかかります。お金を持った状態で逮捕される人など,ほとんどいませんから,当番弁護士が接見した被疑者・被告人から私選弁護人の依頼を受けると,多くの場合にご家族やご友人の方と弁護士費用のご相談をする必要が生じます。

そのため,接見後に,当番弁護士から被疑者・被告人の家族や友人,当番弁護士の派遣依頼をした人などに対して連絡を取り,1回限りで被疑者からの伝言を伝えたり,私選弁護人の選任についてご相談したりすることがあります。

 

もっとも,十分な資力(収入や預貯金等)のない方について,一定の条件を満たす場合であれば,被疑者援助制度を使って起訴前の段階の私選弁護人となったり,最初から国選弁護人となることも可能です。

 

当番弁護士制度を運営しているのは,各弁護士会の刑事弁護センター運営委員会です。各地方によって制度に若干の違いがあり得ますので,ご注意ください。本項の記載は,すべて埼玉弁護士会の当番弁護士制度を基準にしています。

(なお,弁護士吉岡毅は,長期間にわたり埼玉弁護士会刑事弁護センターの副委員長として,当番弁護士制度の運営や弁護士会規則の改正,弁護士向けの研修会講師やマニュアルの作成等を担当しています)。

 

 

 

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