どんな場合に逮捕されるのか?(4)-緊急逮捕の要件

緊急逮捕の厳しい要件とは?

緊急逮捕が許される要件は,「重い犯罪」について,逮捕の「充分な理由」と,逮捕の「緊急の必要性」があることです(刑訴法210条)。
通常逮捕や現行犯逮捕よりも厳しい基準を満たしたときに,はじめて緊急逮捕が認められます。

 

重い犯罪とは,「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」です。

重いと言っても,実際にはほとんどの罪がこの基準に当てはまってしまいます。

たとえば,殺人罪,傷害罪,強盗罪,窃盗罪,強姦罪,強制わいせつ罪,詐欺罪,恐喝罪,横領罪,公務執行妨害罪,住居侵入罪,名誉毀損罪,器物損壊罪などです。

これに対して,暴行罪,脅迫罪,軽犯罪法違反の罪などは,重い犯罪には当たりませんから,緊急逮捕できません。

 

そして,このような重い罪を犯したと疑うだけの「充分な理由」が必要です。

単なる疑いでは足りません。とても濃い疑いであることが必要なのです。

 

そのうえで,逮捕状がないのにすぐに逮捕しなければならないほどの緊急の必要性があるときに,はじめて緊急逮捕できます。

緊急とは,「今この場で逮捕しないと,逃げてしまう」,「今捕まえないと,証拠が壊されてしまう」というような切迫した状況のことです。

 

さらに,緊急逮捕の際には,緊急逮捕する理由を口頭で説明しなければなりません。

 

加えて,逮捕した後,即刻,裁判官に逮捕状(令状)を請求する必要があります。

裁判官が逮捕状を出さないと決めたときは,さかのぼって緊急逮捕は違法だったことになり,直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

緊急逮捕の要件がなければ逮捕できない

このように,緊急逮捕の要件は非常に厳しいものです。

 

逆に言えば,逮捕状もないのに緊急逮捕するだけの強い疑い(充分な理由)がないとか,今すぐ緊急逮捕しなければ逃げてしまうような状況はないことなどを自分ではっきりさせることができれば,緊急逮捕されることはないと言えます。
緊急逮捕は例外的で,それほど頻繁に使われるものではありませんが,念のため覚えておいてください。

 

なお,現行犯逮捕と異なり,緊急逮捕は,私人には許されていません。