逮捕される人とは?(1)-容疑者と被疑者の違い

捜査対象者は「被疑者」

逮捕される人のことは,何と呼んだらいいのでしょうか?

逮捕される側,捜査をされる側の人を指す色々な言葉について,整理しておきます。

 

まず,警察の捜査の対象となっている人,罪を犯したと疑われて調べられている人のことを,法律では「被疑者」と言います。

これから逮捕される人,既に逮捕されてしまった人も「被疑者」です。

後で解説するように,逮捕後に続けて勾留されている人も,捜査中の対象者なので「被疑者」です。

 

この「被疑者」のことを,マスコミ用語で「容疑者」と言っています。

マスコミが勝手に作った造語ですから,どこからどこまでが容疑者なのかという定義もありませんし,法律的には不正確な言い方です。

一応,被疑者と容疑者は同じ意味だと考えておけばいいと思います。

「犯人逮捕」はあり得ない

マスコミなどで,よく「犯人を逮捕した」という表現を使っていますが,非常に危険な言葉遣いです。

 

法律上,このような言葉を使ってよいのは,現行犯逮捕の場合だけです。現行犯逮捕は,「現行犯人」の要件に該当する人を逮捕するための手続だからです。

それでさえも,後でえん罪だったということはあります。

現行犯逮捕以外の通常の逮捕の場合,その人は「被疑者」(容疑者)として警察に疑われているにすぎず,「犯人」であるかどうかは,まだ分かりません。

後になって,実は犯人でないことが分かっても,マスコミは,いちいち訂正報道をしませんし,名誉は回復しません。

 

「犯人逮捕」という表現を平気で使う日本のマスコミは,人権擁護の意識がまったく欠けていると言えます。