犯罪被害者にできる6つのこと

犯罪被害者となってしまったとき,一方的に傷つけられたうえに,自分ではどうすることもできないという無力感を強く感じさせられます。
しかし,被害者には,法律によって保護され,支援される権利があります。そのための手続や制度もたくさんあります。
被害者としてどんなことができるのか,被害を受けてしまった後で一体どんなことを考えていけばいいのか,まずは被害者支援保護・支援手続の全体像を把握できるように大きく6つの項目にまとめました。

事件や犯人について知る-被害者にできること(1)

犯罪被害に遭った人が途方に暮れてしまう理由は,被害を警察に訴えても,警察から被害者には,犯人がどこの誰か,どんな事件だったのかといった情報がほとんど入らず,何が何だか分からないまま放置されることが多いからです。

 

被害者は,警察や検察と対応する中で様々な情報を得ることができるほか,代理人弁護士を通じて事件の証拠や記録を見ることができます。
刑事裁判を傍聴したり,自分も刑事裁判に被害者として参加することによって,被告人に直接質問したりすることもできます。
事件や犯人について知ることは,被害者の大切な権利であり,弁護士による被害者支援活動においても出発点になります。

 

事件や犯人の詳細な情報を得るための具体的方法については,

◆被害者が事件や犯人について知るための8つの方法

を参照してください。

被害回復,損害賠償や慰謝料を請求する-被害者にできること(2)

被害者には加害者(犯人)に対して慰謝料や損害賠償を請求する権利があります。犯罪被害からの回復を求めることは,被害者にとって最も切実な要求です。

もちろん金銭による賠償で完全な被害回復にはなりませんが,残念ながら法律の限界です。

 

被害者は,加害者,特に逮捕されて刑事手続に入った被疑者・被告人(弁護人)との間で示談交渉を行い,被害弁償を受ける権利があります。
交渉がうまくいかなければ,調停や訴訟などの手続により,刑事手続とは別に民事上の損害賠償請求が可能です。また,刑事裁判に引き続き行われる損害賠償命令という制度も利用できます。
さらに,一定の犯罪については国の被害者回復給付金支給制度もあります。

 

犯罪被害からの金銭的回復のため具体的制度の詳細については,

◆被害回復や損害賠償請求のため5つの方法

を参照してください。

犯人の処罰を求める-被害者にできること(3)

被害者側が犯人に対する厳しい処罰を求めるのは,人として当然の感情です。

犯罪行為をした真犯人が刑事責任や刑罰を免れるとすれば,著しく正義の観念に反するでしょう。

 

捜査機関(警察や検察)に対する犯罪被害の申告を「被害届」と言います。

これに対して,捜査機関に犯人の処罰を求めることは「告訴」と言います。
いずれの場合でも,被害者は参考人として警察や検察から話を聞かれますし,裁判になれば証人として出廷して証言をすることもあります。

希望があれば,法廷で自分の心情を話したり,被害者参加して被告人に対する求刑意見を述べることもできます。

不起訴処分に対しては,検察審査会に対する申立てができます。

 

加害者の逮捕や処罰を求めるためのさらに具体的方法や手続については,

◆被害者が犯人の処罰を求めるための5つの方法

を参照してください。

自分のプライバシーを守る-被害者にできること(4)

重大な犯罪被害に遭うと,理不尽にも,犯人ではなく被害者が真っ先にマスコミの餌食にされることがあります。あるいは,興味本位のネットの書き込みでプライバシーを暴かれたり,虚偽の情報を流されたりすることもあります。

 

二重にも三重にも傷つけられる事態を避けるため,被害者側でもマスコミやインターネット対策が必要になる場合があります。

また,刑事裁判は原則として公開法廷で行われますが,被害者のプライバシー保護のために利用できるいくつかの制度があります。
これらについては,できる限り代理人弁護士と相談しながら対応を考えていく必要があるでしょう。

 

マスコミやネットから家族を防衛するための対策については,

◆被害者が自分のプライバシーを守るための3つの対策

を参照してください。

再犯から身を守り,再度の事件被害を防ぐ-被害者にできること(5)

犯罪被害の中でも,一定の類型の事件は加害行為が繰り返される危険があります。ストーカー事件やDV事件はその典型です。

警察とも相談・連携しながら,代理人弁護士を通じたストーカー規制法やDV防止法の活用により,適切な保護を受けるようにしてください。
また,犯罪類型にかかわらず,後々処罰された犯人からの逆恨みを避ける配慮なども必要です。
刑事裁判における証人保護の制度を最大限利用するほか,各種の被害者通知制度により,犯人の出所情報等をきちんと把握しておくとよいでしょう。

 

再犯から身を守るための法律や制度の説明については,

◆被害者が再度の事件被害を防ぐために利用できる5つの制度

を参照してください。

弁護士を代理人に立てる-被害者にできること(6)

犯罪被害者となってしまったときは,とにかく勇気を出して弁護士の援助を受けてください。様々なことで弁護士を窓口とし,複雑な法律上の手続を代理してもらうことができます。


被害者支援活動に詳しく,実績のある弁護士を自分で探す自信が無いときは,各地の日本司法支援センター(法テラス)で被害者精通弁護士の紹介を受けることができます(弁護士吉岡毅は,法テラス埼玉地方事務所において被害者精通弁護士として登録されています)。
また,相談や援助のための弁護士費用についても,国選被害者参加弁護士制度や犯罪被害者法律援助制度を利用することで,無料にしたり立て替えてもらったりできることもあります。まずはお問い合わせください。

 

弁護士に相談や依頼をするための具体的方法や制度については,

◆被害者が弁護士を代理人にする場合の5つの方法

を参照してください。

まとめ-犯罪被害者にできる6つのこと

  1. 事件や犯人について知る
  2. 被害回復,損害賠償や慰謝料を請求する
  3. 犯人の処罰を求める
  4. 自分のプライバシーを守る
  5. 再犯から身を守り,再度の事件被害を防ぐ
  6. 弁護士を代理人に立てる