被害者が事件や犯人について知るための8つの方法

犯罪被害者となってしまったとき,事件や犯人についての様々な疑問が浮かびます。
一体どうして自分がこのような目に遭ってしまったのか,警察による捜査の状況が今どうなっているのか,犯人や共犯者たちは何処の誰なのか……。
しかし,被害者が代理人を選任していない場合,情報収集の方法が分からないため,事件や犯人や捜査状況についての情報がほとんど入って来ません。
そこで,被害者の立場から事件や犯人についての情報を集める具体的方法8つをまとめました。

警察との対応-事件や犯人の情報を得る方法(1)

事件捜査を現場で対応するのは警察ですから,事件や犯人について生の情報をたくさん持っているのは警察(担当刑事・警察官)です。
しかし,個々の警察官の心情はともかく,法律のうえでは,警察が捜査して証拠を集めるのは後の刑事裁判で使うためであって,被害者のためではありません。

そのため,警察が集めた情報を被害者に積極的に教えることはありません。

原則として,証拠を見せることもしません(「犯罪被害を受けたとき最初にすべき3つのこと」のうち,(2)証拠保全の項目も参照してください)。
それでも,被害者の側から警察に対して知りたい情報をきちんと伝えて交渉すれば,一定の範囲内で,逮捕された被疑者の名前や現在の供述内容などを教えてくれます。
弁護士が代理人につくことで,警察から得られる情報の範囲が広がることもあります。

検察官との対応-事件や犯人の情報を得る方法(2)

検察官は,警察が捜査した証拠を整理して,被疑者の処分(裁判にかけるか,罰金にするか,釈放するか)を決めます。そのため,事件の全体像や処分の方針については,個々の警察官よりも詳しく分かっていることになります。
警察が教えてくれなかった情報でも,検察官と積極的に交渉することで教えてもらえることがあります。
また,検察官の場合,警察の場合以上に,代理人弁護士が交渉することで非常に多くの情報を得ることができます。

被害者連絡制度とは?-事件や犯人の情報を得る方法(3)

警察には,「被害者連絡制度」という被害者への情報提供のための制度があります。
一定の重大な犯罪については,被疑者の検挙までの捜査状況や逮捕後の処分状況を,担当警察官が,被害者または遺族に対して面接や電話で教えてくれることになっています。
ただし,制度の対象犯罪の多くは,被害者が身体を傷つけられた罪です。
また,この制度の対象外の事件についても被害者の要望に配慮して対応することになっていますが,要望していなければ連絡は来ません。

被害者等通知制度とは?-事件や犯人の情報を得る方法(4)

検察庁では,「被害者等通知制度」という被害者への情報提供制度があります。
警察の制度と異なり,検察官が受理したすべての事件について,事件の処理結果や刑事裁判の期日や状況,有罪判決確定後の加害者に関する状況を,口頭または文書で通知してくれます。
しかも,通知対象は被害者と遺族だけでなく,婚約者や代理人弁護士なども含まれています。
ただし,積極的に通知を希望していないと,ほとんどの事項は通知されません。

証拠や事件の記録を見る-事件や犯人の情報を得る方法(5)

残念ながら,刑事裁判が始まる前に,被害者が警察の集めた証拠を直接見ることは,原則としてできません。
しかし,損害賠償請求や被害者参加のために必要な証拠については,被害者が検察官に請求すれば,裁判の前でも一定の範囲で見ることができます。
特に,代理人弁護士による請求の場合には,開示される証拠の範囲も拡大され,多くの場合はコピーを取ることもできます。
また,被疑者が起訴された後は,一定の範囲で裁判の記録を閲覧(見ること)・謄写(コピーすること)する手続があります。

刑事裁判の傍聴-事件や犯人の情報を得る方法(6)

被告人の裁判を実際に傍聴する(見聞きする)ことは,事件や犯人について知るための最も基本的な方法です。
刑事裁判は公開が原則ですから,誰でも自由に傍聴できます。もっとも,傍聴席には限りがあるため,対策を取らないと被害者なのに席が一杯で傍聴できないということもあり得ます。そこで,裁判所に対して事前に申し入れを行うことで,被害者用の席を確保してもらうことができます。

傍聴の場合にも,弁護士に立ち会ってもらうと心強いでしょう。

刑事裁判への被害者参加-事件や犯人の情報を得る方法(7)

一定の重大な事件では,刑事裁判をただ傍聴するのではなく,被害者が実際に刑事裁判に参加することもできます。
被害者参加すると,検察官の横に座って,書面でやり取りされる内容もリアルタイムにすべて把握することができます。

何より,被告人側の情状証人に対して被告人の生活状況や監督方法について質問したり,被告人本人に直接事件のことを質問したりできます。
ご自身で法廷に出ることが心情的に困難な場合は,弁護士と一緒に,あるいは弁護士のみを代理人として参加するとよいでしょう。

 

被害者参加の詳細については,

◆刑事裁判への被害者参加で有利な9つのポイント

を参照してください。

出所情報・処遇状況等の通知制度-事件や犯人の情報を得る方法(8)

被害者にとって,犯人が有罪判決を受け,刑務所に入ればそれで終わりというわけではありません。
受刑中の加害者の処遇状況や,仮釈放を受けるのかどうか,刑の執行が終了して釈放されるのがいつなのか,釈放後の行き先はどこか,保護観察中の状況や終了時期など,判決後に知りたい加害者に関する情報がたくさんあります。
これらについては,被害者やその代理人弁護士が希望すれば,検察官等から通知を受けることができます。

まとめ-事件や犯人の情報を得るための8つの方法

  1. 警察から情報を得る
  2. 検察官から情報を得る
  3. 被害者連絡制度(警察)
  4. 被害者等通知制度(検察)
  5. 証拠や事件の記録の閲覧・謄写
  6. 刑事裁判の傍聴
  7. 刑事裁判への被害者参加(情状に関する証人尋問,被告人質問等)
  8. 出所情報・処遇状況等の通知制度