裁判員の呼び出しを無断欠席すると?

裁判員候補者の「無断欠席」が約4割に達し,最高裁が対策を検討している,という報道がなされています。

 

……う~ん。

言葉どおりの意味でも十分すぎるほど重大問題なのですが,それだけでは済まない突っ込み所が,実はたくさんあります。

 

 

 

皆さん,「裁判員候補者名簿に載った」という裁判所からの通知を受け取ったことがありますか?

 

裁判所は,毎年11月ころ,翌年の裁判員候補者となる人をクジで選び,裁判員候補者名簿というのを作っています。今のところ,裁判員候補者名簿の候補者となるのは,衆議院議員の選挙権を有する人(20歳以上)ということになっています。

ちなみに,2016年の裁判員候補者名簿に載る確率は,有権者454人に1人でした(全国平均)。

これは,あくまでも「候補者名簿」なので,そこに載ったからといって,実際に特定の事件で裁判員に選ばれるとは限りません。

でも,その名簿に載ると,とりあえず「載ったよ!」という通知が来るのです。

 

そこには,調査票というのが一緒に入っていて,裁判所が就職禁止事由や辞退事由などを調べます。

要するに,法律上裁判員になれない人などをあらかじめ排除するわけです。

たとえば,義務教育を終了していない人,禁錮以上の刑に処せられた人,国会議員,知事・市町村長,司法関係者(裁判官,検察官,弁護士など),大学の法律学の教授・准教授なんかは裁判員になれないのです。

 

でも,弁護士や大学教授は民間人であって,普通の感覚を持った一市民にすぎないのですから,何で排除されるのか私には理解できません。

「市民参加の意義に反する」とか何とか理由を付けていますが,弁護士や法律学の教授などの法律の専門家が裁判員になると,判決を書く裁判官たちが都合良く説得できなくなって困るので,はじめから裁判員になれないことにしているだけです。

まったく馬鹿馬鹿しいですね。情けない。

 

 

それはともかくとして,候補者名簿に載って,調査票で排除されなかった人は,特定の事件で裁判員に選ばれる可能性があります。

 

もっとも,この段階でも,またクジがあります。

 

おおよそ裁判員裁判が開かれる6~8週間前になると,裁判員候補者名簿の中から更にクジで「当該事件の裁判員候補者」が選ばれ,裁判所に呼び出されます(文字どおり「呼出状」という書面が送られて来ます)。

呼び出す人数は,事件の内容や規模などによって違います。

裁判が数日で終わる一般的な事件であれば,50~60人くらいを呼び出すことが多いみたいです。

このときには,質問票というのが一緒に入っていて,裁判員として審理に参加することを辞退しなければならないような事件との利害関係だとか,やむを得ない事情だとかがないかどうかを確認されます。

「70歳以上の人」だとか「学生」だとか「重要な用務」だとかの辞退事由があることを裁判所に伝えれば,呼出に応じなくても構いません(呼出が取り消されます)。

また,実際には,呼出には応じたけど,当日,「やっぱり,どうしても辞退したい」と訴えて裁判所に辞退を認められる人が,必ず何人かいます。

裁判官の考え方にもよりますが,辞退事由をかなり緩く認めることが多い印象です。

やる気のない人に嫌々裁判員をやられると,一番最初に困るのは,その裁判員と何日も顔を突き合わせて話をしなければならない自分(裁判官)だからです。

もちろん,検察官も弁護士も被告人も困りますけど,裁判員と直接話をすることがないので,やる気も何もほとんど分からないんです。

 

 

裁判所は,この手続で呼び出され,当日の辞退もなかった人の中から,最後のクジによって裁判員6名と予備裁判員を選びます。

予備裁判員というのは,裁判員が途中で急病とか事故とかになって欠員が生じても,人数不足で裁判を最初からやり直さなくて良いようにするために,裁判員と同じように最初から最後まで裁判を見続けておく人です。

もっとも,ただの予備ですから,議論には参加できないし,判決に影響する評決権もありません。裁判員に欠員が生じない限り,「ただ裁判を一緒に見ているだけ」の人です。

予備裁判員は2名くらい選ばれていることが多いですね。

 

そうすると,たとえば60人呼び出して,選ばれるのは裁判員6人と予備裁判員2人とかです。

残りの人は,そのままお帰りいただく,ということになります。

逆に,選ばれた人は,選ばれた直後に,すぐ裁判員として裁判官と一緒に法廷に座ることになります。

選任手続は,当該裁判の初日の朝から行われているからです(裁判員が裁判所に来なければならない日数を1日でも減らすためだそうです)。

 

 

 

じゃあ,ここで冒頭の報道に戻りますね。

裁判員になるのが嫌だからといって,選任手続に呼び出されたのに無断欠席したら,どうなると思いますか?

 

 

 

実は,正当な理由なく欠席した人には,「10万円以下の過料」という罰則があるのです。

 

 

そこが今まさに大きな問題になっています。

ここまで無断欠席が広がっているのに,罰則の適用例は一件もないからです。

 

 

今は,呼び出された裁判員候補者の約4割が無断欠席という状態です。

この無断欠席率は毎年上昇していて,まったく歯止めがかかりません。

しかも,この数字には,まだトリックがあります。

最初の調査票で排除された人はもちろん,正当な理由があって辞退して呼び出しが取り消された人や,当日なんだかんだと言って辞退が認められた人などは,この4割の中には入っていないのです。

それに加えて,辞退事由が結構緩い。

 

そうすると,無断ではないけど事実上の欠席や選任拒否(辞退)をしている人を全部含めれば,4割どころか,ホントはもっとすごい数になっています。

 

 

 

最高裁は,出席率向上のための取り組みをするそうです。

また,有名タレントを使ったCMとかに多額の税金を垂れ流すんでしょうね,きっと。

 

そんなことしなくても,法律に従って,正当な理由なく欠席した人には「10万円以下の過料」という罰則を適用すればいいと思います。

あっという間に,ほぼ100%の出席率になりますよ。

 

しかし,裁判所にそれはできないでしょう。

なぜなら,裁判所は,裁判員をひたすら「お客様扱い」しているからです。

 

それは,決して「大事にしている」という意味ではありません。

法律の分からない一般市民である裁判員は,慇懃無礼に馬鹿にされているということです。

 

 

日本の裁判員制度の最大の問題は,実は,そこにあるのです。

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