TBSのドラマ「99.9 -刑事専門弁護士-」が人気です(でした)。
……最終回の放送後に今さらではありますが。
でも,予想以上に人気が出たからこそ,プロの刑事弁護人として今後も無視できないドラマになった,とも言えます。
きっと続編とか映画とかもやると思うんですよね。だって,おもしろかったから。
なにより,キムタクの「HERO」と比べると,だいぶリアルでした。
「HERO」は現実の再現度5%以下でしたが,「99.9」は30%~40%くらいだと思います。
日本の法律ドラマの中では,めずらしく良く勉強して作られた内容でした。
さて,ドラマの中ではともかく現実の日本では,「刑事専門弁護士」(刑事弁護しか扱わない弁護士)は,極めて数少ない存在です。
しかも,数少ない自称「刑事専門弁護士」(刑事専門法律事務所)が,本当の意味で実力のある刑事弁護人であるかどうかは,残念ながら何の保証もないと言えます。
また,専門とは言わないけれども実力のある「本物の刑事弁護人」も,もちろん多くはありません。
そして,「日本の刑事事件は起訴されると99.9%が有罪になる」というドラマのナレーションは,真実です。
そうすると,結果としてどうなるか?
皆さんの想像の斜め上を行くようなレベルで,日本には「えん罪」があふれているし,その「えん罪」と真っ向勝負できる本物の刑事弁護人は数少ない,ということです。要は,多勢に無勢。
だから国連で,「日本の刑事裁判は中世のようだ」と笑われてしまうんです。
そういう国の刑事裁判では,刑事弁護人の必死の努力にもかかわらず,ちょっと痴漢に間違われただけでも人生が崩壊するほどの悪夢になります。映画「それでもボクはやってない」のように。
そうなってしまう理由は明らかです。
国選弁護事件の報酬が低すぎるからです。
……と,いきなり断言すると,論理の結びつきがわかりにくいですよね。
つまり,こういうことです。
日本の刑事弁護のほとんどが,国選弁護事件です。全体の8割~9割が国選です。
なぜなら,ドラマと違って現実の被疑者・被告人やその家族は,私選弁護のための弁護士費用を支払えないことが多いからです。
特に,殺人事件や強盗致傷事件など,死刑や無期懲役が求刑されるような重大事件ほど,その傾向が顕著です。
重大で弁護するのが難しい事件ほど,私選弁護の割合は著しく減少します。
そして,国選弁護で国から弁護士に支払われる弁護士報酬は,極めて低額です。時給にしたら数百円以下になってしまうとか,普通です。
それでも,赤字にならずに済んだらマシなほうでしょう。
中でも時間のかかる難解な刑事事件を国選弁護人として引き受けると,真面目に弁護すればするほど,大赤字ということもあります。
ドラマ「99.9」の松潤のような真剣な弁護活動を,もし国選弁護人として続ければ,報酬を得るどころか弁護士自身の貯金を取り崩して生活することになるでしょう。
かといって,重大で困難な事件の多くが国選事件である以上,低報酬の国選事件に自ら挑み続けなければ,刑事弁護人としての本物の実力は養われないのです。
しかも,運が味方しなければ,まず勝てません。頑張っても頑張っても,負け続けるんです。
一体,誰がそんな無茶苦茶な仕事をやりたがるでしょうか。
明らかに「無理ゲー」です。
だから,必然的に刑事弁護は多勢に無勢になり,「99.9%有罪」という現実が日本で固定化したのです。
しかし,そういう圧倒的に不利な状況の中で,弁護士の中でも数少ない奇特な人たち,すなわち「本物の刑事弁護人」たちは,長年にわたり採算度外視で刑事事件に情熱を傾け,知識を蓄え,知恵を巡らし,経験を積んできました。
まさにドラマのとおりに,0.1%の真実を追い求めてきたのです。
彼らがそれをなしえたのは,決して,刑事事件を専門にしたからではありません。それでは,誰も食べていけませんでした。
ほかの普通の弁護士と同じように様々な種類の民事事件を多様にこなしながら,その一方で,ただただ正義感のみによって,国選弁護をはじめとする刑事事件に取り組んできたのです。
今でも,それは基本的に変わっていません。
全国に散らばる「本物の刑事弁護人」たちの多くが,文字通りの「刑事専門弁護士」ではありません。
刑事弁護に対する情熱と知識と知恵と経験をすべて備えていますが,刑事事件だけを受任するわけではないのが実情です。
それでも,警察・検察の有する圧倒的な資金力と人海戦術に創意工夫で対抗し,偏見に凝り固まった裁判官の脳みそをほじくり返すために,最後まで「事実」にこだわり続けるのです。
ドラマでは,松潤の演じる深山弁護士を「超型破りな弁護士」と紹介していますが,刑事弁護人としては,ごく普通でしょう。
もっとも,刑事弁護人たちは弁護士の中でも変わり者集団であるという意味なら,その通りかもしれませんが……。
実は,「99.9」が刑事弁護のリアルさを残しながらもエンターテイメント性を打ち出せた設定の秘密が,ここにあります。
深山弁護士(松潤)のやっている刑事弁護は,脚色はありますが,本物の刑事弁護人がやること,考えることと,それほど変わりません。
ただ,現実にそれをやるためには,私選弁護のための多額の弁護士費用を要するのが普通です。つまり,依頼者が弁護士費用を用意できない限り,私選弁護の依頼は成立しません。
では,国選弁護人でいいかというと,国選では弁護士を依頼者が選べないのです。
そうなると,肝心の深山弁護士がその事件を受任できないことになります。
そこだけはリアルにできないのです。
そのため,ドラマでは,斑目法律事務所という日本有数の巨大ローファームが採算度外視で刑事事件専門チームを新設し,事件の依頼者も事務所も,弁護のための資金力には一切問題がないという非現実的な設定になっているのです。
刑事弁護は,捜査機関によって見逃された事実を丹念に追求するのが基本です。
その基本をよく押さえた,なかなか見応えのあるドラマでした。
もちろん,見ていて思わず「コラコラ」と言ってしまった突っ込み所はたくさんあったのですが,最終回記念ということで,今回は褒めて終わります。
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Garrett Waddell (木曜日, 02 2月 2017 13:08)
What's up mates, how is all, and what you wish for to say concerning this article, in my view its really remarkable in favor of me.